伝統中医学とはなんでしょう…

① 中医学って何?

「漢方」「東洋医学」「中医学」…近年、テレビや本などで耳にすることが増えましたが、
それが何かを明確に答えられる人は意外と少ないかもしれません。
「漢方薬…臭くて不味そう」、「鍼灸って…痛い?熱い?」って感じだけど、どうなんだろう???

中医学とは、長い歴史の中で中国で体系化された、理論に基づく伝統医学です。
単なる民間療法ではなく、WHOも現代医学と共に公式に医学と認め、身体の状態を「陰陽」「気・血・津液」のバランスから見つめ、病気の予防・治療・そして“未病”の改善を重視する包括的な医学です。

② 中医学のはじまりと歴史

中国には、約9000年前から人々が暮らし、と向き合ってきた歴史があります。

中医学の基礎となる古典には、以下のような書物があります:

黄帝内経(こうていだいけい)
 中医学の哲学・診察・治療理論の基礎。今でも使われる医学書。

神農本草経(しんのうほんぞうきょう)
 薬草を365種分類し、上品・中品・下品に分けた最古の本草学書。

傷寒雑病論(しょうかんざつびょうろん)
 感染症と内科疾患の治療体系をまとめた臨床重視の書物。
その他にも中国四千年とも言われる歴史の中で病と闘ってきた中医師たちの記録が数々の医学書にまとめられています。

これらの古典に記された知識は、時代を超えて脈々と受け継がれ、現代の中医学にも活かされています。中医学にはエビデンスがないと言われますが、自然科学そのものであり、マウスなどの動物ではなく中国の人々の身体を通して実践されてきた臨床データそのものです。

③ 中医学の基本的な考え方

中医学の大きな特徴は、**“全体を整える”**という考え方にあります。

陰陽のバランス
 中国の哲学では、この世に起こる森羅万象は陰と陽の関係性が変化することで起こると考え、最も調和の取れた状態を“中庸”とします。
私たちのからだの生命活動も陰と陽の調和で成り立っており、バランスが崩れると不調が現れると考えます。“中庸”つまり陰陽のバランスがとれている状態(陰平陽秘)が健康な状態と考えます。

気・血・津液・熱
 からだはこれらの「生命活動の基本物質」が過不足なく、また滞ることなく全身をくまなく巡っていることで健康に生きることが出来ると考えます。これらが過不足したり滞ったりして乱れることで、体調が崩れ、さまざまな症状が現れます。

未病
 病気ではないが健康でもない状態。「上工治未病」(名医は未病を治す)と言い、この「未病を癒す」ことが中医学の真骨頂です。
ちょっといつもと違う、調子がおかしいなと感じたら、すぐに食べ物や生活習慣を見直して本格的な病気にならないように治療と養生をすることが中医学なのです。

④ 中医学の診察と治療のしくみ

中医学では、次の4つの方法で体の状態を診察します:

望診:舌や顔色、体型を観察する

聞診:声やからだから出るにおいを聞き分ける

問診:生活や症状について詳しく聞く

切診:脈やお腹、経絡の状態を診る

これらを通して“証”を立て、その証に対して治療方針を決めることを**「弁証論治」**と言います。
治療方針が決まれば、具体的な治療法を組み立てます。漢方薬、鍼灸、推拿などどの治療法を使うことが最も安全で効果的かを考え、いくつかの両方を組み合わせる場合もあります。
この「診て・考え・治す」一連のプロセスこそが、中医学の真髄です。「弁証論治」のない治療はたとえ漢方薬が処方されたとしてもそれは伝統中医学ではないと言えます。

今のあなたのからだ(心身)を診察してみよう

⑤ 中医学が「今」の私たちにできること

現代の生活では、情報も食事もストレスも“多すぎる”時代。
だからこそ、自分の体質を知り、整えるための知恵として中医学が役立ちます。

病気になる前の“ちょっとした不調”に気づく。これを“兆し”といい、

体質や季節に合わせた食材選び=薬膳

心と体のバランスを整えるための養生法

普段、好きなものを食べ、好き勝手な暮らしをして、ストレスフルな毎日阻過ごし、病気になったら医師にすべてを委ねる、そんな暮らしではなく、私たちは自然と調和し**自分で日々を整える術(すべ)**を持つことをおすすめします。

⑥薬膳ってなに…

薬膳とは…?からだに良い物を食るということではありません。
自分のいまのからだ(心身)の状態を知り、その弱ってバランスが乱れている状態を、整えてくれる食べ物を選んで摂ることで、バランスの乱れを整え中庸に戻し健やかなからだ(心身)にすることなのです。
食べ物には五味、五性、帰経があります。この食べ物にチカラを借りて、乱れたバランスを調えることが薬膳なのです。

⑦ 結びに 〜 天人合一のこころ

中医学には、「天人合一(てんじんごういつ)」という思想があります。
自然と人はひとつの理(ことわり)で繋がっているという考え方です。

四季の流れ、昼と夜のリズム、自然の変化に合わせて食べ、暮らし、呼吸する。
そんなシンプルだけれど、現代人が忘れかけた“自然と調和する生き方”が、
伝統中医学の根底には流れています。

🌱 伝統中医学は、

病気を治すだけの医学ではなく、
**わたしらしく、しなやかに生きるための“暮らしの智慧”**です。