薬膳ってなに…

中医薬膳学(Traditional Chinese Medical Dietotherapy)とは、
中国の伝統医学(中医学)を基礎として、

「食べ物の性質と効能」を中医学の視点でとらえ
「体質」「季節」「体調」に合わせて
✅ 食材や調理法を組み立てることで 未病(みびょう)を整え、健康を維持するための学問

です。

そして薬膳とは、この“中医薬膳学に基づく食による調整法”で、「病気を治す食事」ではなく、病気になる前の「未病(みびょう)」を整えるという考え方が基本です。つまり、“食べることで心身のバランスを整える食養生”です。

症状を治すというより、カラダ(心身)を整えるという考え方が基本です。

ココロも含めたカラダは、外からの邪気(六淫)や内側からの邪気(七情)、また生活習慣や生活環境などからさまざまな影響を受けて過ごしています。ストレスや過労や冷えなどさまざまな邪気により心身のバランスが乱れ失調すると、あちこちに自覚症状が現れてきますが、病院に行って検査を受けても「どこの異常ナシ」というレベルで、この状態を中医学では「未病(みびょう)」と言います。

体質診断を用いて、今の自分のカラダが「寒熱虚実」のどのように乱れているのか、どのタイプの「未病」なのかを知り、その乱れを食べ物や薬膳茶などで整えようという考え方です。

症状がすぐに治るなどの見返りを期待せず、自分の乱れたバランスと向き合って、食べ物や薬膳茶を選んだり、生活習慣を見直してみるというふうに取り組むのが薬膳的養生法です。

📚 中医薬膳学の成り立ち

中医薬膳学は、古代中国の以下のような考え方を土台にしています:

薬食同源:薬も食も、根源は同じ。日々の食事こそが治療であり、予防である。

食治(しょくち):食事によって病を治す、あるいは体調を整えるという発想。

神農本草経・黄帝内経などに記された古典理論に基づく。

🔍 中医学 × 食材学 × 調理学の融合

中医薬膳学は、単なる栄養学とは異なり、これらを組み合わせて、**一人ひとりの体に合わせた「食の処方箋」**を立てるのが「薬膳」なのです。

📌 中医薬膳学の実践

【体質に合わせた薬膳が大切】

身体によいと言われる食材はたくさんあります。
納豆しょうがなど、どんなにカラダに良いと言われる食材でも、すべての人に合うわけではありません。
納豆は胃が丈夫な時は良いけど、胃腸が弱っている時はスープや軟らかく煮たお豆の方がおすすめで、生姜も冷えている人には良いけど、余分な熱がこもっている人には余計しんどくなることもあります。

だからこそ、薬膳を正しく取り入れるには、

●食材の性質を知ること

●自分の今の体質を知ること

が大切なのです。

【食材の性質を知り、五性・五味で選ぶ】

中医学では、食材にはそれぞれ**性質(五性)と味(五味)**があるとされます。
自分の体質(証)や気になる症状に合わせて、温を補う食材や熱を冷ます食材を選んで、乱れたバランスを中庸に戻します。
また味にも五味(5種類)あり、それぞれの効果があります。この五性と五味に、さらに調理法を組み合わせて、自分のカラダに最適な食材や調理法を選んで献立をつくるのが薬膳処方です。

たとえば、「陰虚でのぼせやすい体質」の人には…

【性質】寒性の食材(熱を冷ます)

【味】甘味や酸味(潤す・補う)

【調理法】蒸す・煮るなど体を温めすぎない方法

→ 白きくらげ、梨、百合根、緑豆などの薬膳が選ばれます。

【自分の今の体質を知る】

中医学では、「今の体の状態(=証/しょう)」を診るために、
以下の視点から判断します。

● 虚実(きょじつ)=足りていないのか?多すぎるのか?

虚:気や血が不足している

実:邪気が多すぎる、巡りが悪い

● 陰陽(いんよう)=冷えているのか?熱がこもっているのか?

陰証:寒がり・冷え性

陽証:ほてり・のぼせ・イライラ

● 気・血・水のバランス

気虚、血虚、気滞、水滞…などのタイプに分かれます

こうした考えをもとに**「証(しょう)」を立てて、自分に合った食材や薬膳を選ぶ**のが薬膳の基本です。

【陰陽五行から見る“臓”の役割】

中医学では、体の機能を5つの「五臓」に分けて考え、それぞれを五行に対応させています。
これら五臓が「相生・相剋」の働きによって互いに影響し合ってバランスを保っているとき、私たちの心身は健康な状態にあります。
この五行論のバランスを整えることも、薬膳の大切な役割です。

【まずは、体の声を聞くところから】

●なんとなく疲れが抜けない

●寝つきが悪い、夢をよく見る

●便秘気味、むくみやすい

●季節の変わり目に体調を崩しやすい

そんな「病院に行くほどじゃないけど不調を感じるとき」こそ、薬膳を試すタイミングです。

💡 中医薬膳学のゴール

【薬食同源】〜食べることが養生〜
中医学では、食と薬に明確な線引きはありません。

例えば、生姜は…

生のまま使えば「発散・解表」作用(生姜=しょうきょう)

乾燥させると「温中・補陽」作用(乾姜=かんきょう)

というように、状態や調理法によって効能が変わるのも薬膳の奥深い魅力です。

✅ 体のバランス(陰陽・気血水)を整え
✅ その人の「今」の状態に合った食事を提案し
✅ 継続的に「未病」を防ぎ、自然治癒力を高めていく

そのための理論と実践の学問体系「中医薬膳学」なのです。

🎓 京都 楽楽堂の薬膳とは

京都 楽楽堂では、中医学の考え方に基づいた薬膳茶や薬膳食材を通じて、

●自分のいまの体質を知る

●体質や季節に合った食材を選ぶ

●毎日の食事でゆるやかに整える

という暮らしに活かす“やさしい薬膳”をご提案しています。

薬膳とは、個人の体質・季節・症状に合わせた日々の食事で「“からだを整え、病を遠ざけ、未病を癒す“中医学の智慧」です。
それは治療ではなく、“健やかに生きるための選択”なのです。